気になるあの人の“バッグと服”。 L’ECHOPPEコンセプター金子恵治編。
気になるあの人の“バッグと服”。 L’ECHOPPEコンセプター金子恵治編。
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気になるあの人の“バッグと服”。 L’ECHOPPEコンセプター金子恵治編。

この春<アウトドアプロダクツ>から、定番プロダクトのサイズ違いが多数登場。前回のバックパックに続き、第2弾目は「ボストンバッグ」にフィーチャー。カラーリングの豊富さはもちろんのこと、新作含め5サイズの展開となりました。今回は、ファッション好きが信頼を寄せる店「L’ECHOPPE」のディレクター金子恵治さんに「バッグ×服」の組み合わせ方を教えてもらいました。
  • 金子恵治
    L’ECHOPPE コンセプター金子恵治Keiji Kaneko

    1973年生まれ。18歳でアパレルの世界に足を踏み入れ「エディフィス」でバイヤーを経験したのち、2015年にセレクトショップ「レショップ」を青山にオープン。他にも多数のブランドや新規プロジェクトを担当。2019年には<アウトドアプロダクツ>との別注バッグを制作。

    Instagram(@keiji_kaneko

231のネイビーをベースに同系色でまとめる。
全体のバランスは「プラマイゼロ」が原則。

“ファッション好きが信頼を置く店”と形容されるほど安定感のある目利きと、痒いところに手が届く商品開発力で、アパレル業界からも一目置かれるセレクトショップ「L’ECHOPPE」。その立ち上げからバイイングまでを幅広く担当しているのが金子さんだ。18歳でファッション業界に足を踏み入れてから現在に至るまで、様々なブランドのディレクションやバイイングを手がけてきた。そんな彼に、私服にまつわるマイルールを聞いた。

「服のスタイリングって、もちろんその人独自のセンスもあると思うんですけど、なんかもっとわかりやすく人に説明できないかな、とずっと思っていて。たどり着いたのが“プラマイゼロ”の方程式。例えば、最初に取り入れたいアイテムを決めて、それが色・サイズともに存在感のあるコートだったとしたら、それを+7って仮定して。そしたらどこでー7をするかって考えて、インナーでー3、靴でー2、バッグでー2……といった要領で抜けを作ってゼロにする、みたいな。特別意識してきたわけじゃないんだけど、プラマイゼロに着地させると、なんとなく心地よくまとまることに気づいたんです」。

この日はネイビーのボストン231を主役に、同じく紺の同系色でシンプルにまとめたスタイリング。似た色の中でも、色味やアイテムのデザインによる強弱があり、そこに“プラマイゼロ”が効いてくる。「このでかくて土臭いカバーオールを中心に、そのラフさを中和するためにちょっとドレッシーなシャツを仕込みました。最初はスニーカーを合わせていたんだけど、ちょっとまだ土臭いなと思って革靴に変えて。そこでしっくりとゼロにまとまった感じがしました。こうやって自分なりの足し算引き算を持っておくと、迷ったときに何かと楽かもしれないですね」。

特にこだわりのポイントはアウター。「カバーオールは戦時中に作られたものなんです。胸と裾あたりにポケットが左右非対称についているんですが、当時は戦争で物資が不足している時代。布が足りなくて上下左右に1つずつポケットをつけることができなかったから、こうやってアシンメトリーにしていたらしく。そういう時代の背景が見え隠れするアイテムは好きですね」。

定番モデル231のネイビーは汎用性が高く、どんなファッションにも合わせやすい優れものだ。「ネイビーという色はこれを合わせちゃだめ、というものがあまりないんです。だから迷ったら、ネイビーを持っておくといいかもしれない。スタイリングするときは、今回みたいに同系色でまとめてもいいし、トーンを合わせて着るのも鉄板ですよね。選びやすくなるし、しっくりきやすいのでおすすめです」。

 

春に取り入れたい鮮やかなエメラルドはミニサイズの230で。
細部の色味に拘るのが小洒落て見えるコツ。

金子さんのスタイリングを見ていると、全体の空気感はアウトドアなのに、どこかきれいさがあったり、ラフなのにちょっと上品に見えたりするものが多い。その秘訣は“ワンポイントフレンチ”だ。実はこれ、金子さんのスタイリングに共通するキーワード。「前職の<エディフィス>時代に培われたものですね。フレンチカジュアルが根底にあるブランドだったので。今でもどこかしら、さりげなくフレンチなアイテムを入れることが多いです。この日でいうと、インナーで着ているボーダーのハイネック。ワンポイント入るだけで、全体の空気感をちょっとだけ変えてくれるんです」。

この日はエメラルドのミニボストン230をポイントに、スウェットとミリタリーのパンツ、スニーカーを合わせたラフなスタイリング。「隠れテーマは“アメリカの日常着”です。全体的に鈍臭い感じがかわいいコーディネートなので、差し色もちょっと外したグリーンを選びました。季節的にも鮮やかなものを取り入れたくなりますよね。全体の色味やトーンで主張を抑えれば、差し色は割となんでもいけちゃいます。エメラルドみたいな明るい色味に抵抗がある人は、同じ230のパープルを合わせてもかわいいと思いますよ」。

スタイリングのポイントはもちろん、フレンチテイストのハイネック。実はこのボーダー部分の“紺色”に金子さんのこだわりが。「これは<L’ECHOPPE>のアイテム。実はこの紺、ネイビーではなく“フレンチブルー”って呼んでいる色で。細かい話なんですけど、ネイビーより赤みが強い。それによって、ありそうでなかなかないフランスっぽさを演出しているんです。フランスっぽいけどフランスにもない、みたいなものを作りたくてできたのがこのアイテムです。超細かいところだけど、こういう細部に小洒落感みたいなものは宿っていると思うんです」。

いつもベーシックな色味に落ち着いてしまう人、色物に抵抗のある人でも色を取り入れやすいミニサイズのボストン。「色物を取り入れるのが苦手って声をよく耳にするんですけど、そういう人にこそ<アウトドアプロダクツ>のバッグはおすすめです。このバッグたちは、もともとアウトドアをする人のツールとして誕生したもの。道具としての色味だから、鮮やかでも割と生活シーンに馴染みやすいんです。一見ビビッドに見えても、案外抵抗なく使えると思いますよ」。

 

存在感抜群の233ベージュには同じくボリュームたっぷりのコートで。
機能性と洒落感の両立にこそ、自分らしさが宿る。

金子さんのものづくりに欠かせないキーワードは“機能性”。「ありふれた言葉に取られるかもしれないけれど、僕はお洒落をフックに、より機能的なものを取り入れやすい環境を作りたいと思っていて。このスタイリングでいうと、アウターは一見スタイリッシュなステンカラーだけど、素材の撥水性や内側のポケットもかなり充実していて。あとはネックレスとしてつけているこれが実はホイッスルだったり。大げさかもしれないけれど、地震に巻き込まれたり、何か危険が迫っていたりするときに、これを吹くことで救われることもあるかもしれないじゃないですか」。まだ当たり前になっていない機能的なものを“お洒落”という側面をプラスすることで世の中に浸透させたい、そんな彼の信念が垣間見える。

この日は大きいサイズのボストン233のベージュを軸に、ナイロン素材のステンカラーコート、スウェットパンツ、シャツにタートルネックを合わせる都会的でベーシックなスタイル。ボリューム感たっぷりでカジュアルテイストなベージュのバッグには、メリハリをつけるため、同じく存在感のあるコートを合わせた。「アウトドア由来の素材をバッグとコートで取り入れた分、ちょっとフレンチできれいなホワイトのタートルとブルーのストライプシャツを合わせました。コートの色味が重めかつ面積も占めているので、スウェットパンツやスニーカーでさらにグッと抜け感を足して。僕的にこれでプラマイゼロです」。

金子さんのスタイリングの中でもう一つ共通するのが“小物使いの秀逸さ”だ。「ネックレス代わりにつけているホイッスルは、アメリカのアンティークモールで見つけたものです。実際にコーチとかがもともと使っていたもので、最初はプラスチックの紐がついていて。合いそうな紐を探していたときに出会った革職人さんに頼んで、紐を付け替えたんです。こういったアイテム自体にしっかりと背景があるもの、自分自身の思い入れのあるものを取り入れることで、コーディネートをさらに自分だけのものに落とし込める。そうやってモノを集めていくうちに、自分らしさもわかってくる気がします」。

今までのボストンでもっとも大きなサイズが233。この春登場した新作だ。「このサイズ感は荷物の多い僕としては、とってもありがたいですね。仕事でお会いする人は知っているんですけど、僕は通勤にキャリーバッグを使っているほどいつも大荷物で。それに匹敵するくらいの容量のボストンをずっと求めていたので」。色味はベージュをセレクト。「迷った末に面積がかなり大きいバッグなので、抜け感のあるベージュにしました。スタイリングの引き算に使えるのがポイントです」。

 

実は金子さんの<アウトドアプロダクツ>愛用歴はかなり長い。「若い頃にアメリカ製<アウトドアプロダクツ>の真っ赤なダッフルボストンを買って、今でも現役で使っていますよ。当時のアメリカの作りなので、かなりシンプルで裏地とかも付いてないんですけど、そのアメリカっぽい無骨さが逆に可愛らしくて」。

5年前に<アウトドアプロダクツ>との別注コラボを作った金子さん。バックパックを作ろうと考えたとき、コラボ先は長年“定番”として愛され続ける<アウトドアプロダクツ>一択だったそう。「僕がそのとき作らせてもらったのは、定番モデル452Uのビッグサイズ。<アウトドアプロダクツ>の定番アイテムの魅力は、誕生当時のアメリカの背景を反映したシンプルなデザイン。もっと便利に、と足し算しがちだった時代を経て、無駄のないデザインは今の時代にもフィットしていますよね。だから定番のデザインは絶対に変えたくなくて。そのときは190cmの人に合わせたバッグを作ってみたらどうだろう、ってところから作り始めました。ある人の身長に向けて作ったものをあえて別の体格の人が身につけたときに、独特のおしゃれさが生まれると思っていて。ギチギチに狙わずに余白を作ることで、普通とちょっと違ったバランスや個性が生まれると思っています」。

L’ECHOPPE>がシャツを9サイズ展開にしているのも、この余白に生まれる個性を信じてのこと。S,M,Lと規定のサイズ感にとらわれない“多様性”を持たせたい、そんな想いが彼のブランドづくりの根底にある。今回<アウトドアプロダクツ>から登場したサイズバリエーションも、より多くの人に選択肢を与え、多様なファッションを生み出していくに違いない。

 

Photo:Sachiko Saito
Edit:RIDE MEDIA&DESIGN inc.

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